#16 Viriditas の季節に ― 庭を眺めながら、自然療法について考えたこと <前編>
- 森 Wenzel 明華

- 7月23日
- 読了時間: 7分
こんにちは。ドイツ自然療法スクール / ヒルデガルト・ファミリエ 主催、一般社団法人 国際植物療法機構グリーンフォレスト代表の 森 Wenzel 明華 (もり・うぇんつぇる さやか) です。
わたしは 20 年以上にわたって、様々な自然療法を研究し、実生活の中で実践しています。
ドイツには、聖ヒルデガルトという約 1,000 年前に活躍した自然療法の基盤を築いた修道女がいました。
その教えは、今なお多くの人々に時代を超えて愛され、ドイツの自然療法や教育にも影響を与えています。
医師、博学者でもあった聖ヒルデガルトは、自然と調和した生活を重視し、
薬草や自然療法に関する貴重な知識を残しました。 こちらのヒルデガルト・ファミリエ通信では、その聖ヒルデガルトの残した自然療法や考え方を、わかりやすくお伝えしています。
もっと多くのかたに聖ヒルデガルトの智慧やドイツ自然療法のことを知っていただけたら、嬉しいです!
それでは、第 16 回目のコラム、Viriditas の季節に ― 庭を眺めながら、自然療法について考えたこと <前編> をお届けします。

庭が教えてくれた「調和」
今年も、美しい夏がやってきました。
ソファに座って庭を眺めている時間は、私にとって至福のひとときです。
ピンク色の百合の甘い香りが風とともに部屋へふわりと流れ込み、
夏の光を受けたボラーゴが青空の下でキラキラと咲いています。
その向こうでは、クリーム色のアナベルがやさしく揺れ、
紫色のラベンダーが風にそよぎ、奥には真紅のバラが静かに花を開いています。
夏の青空のもと、風と光の中で、庭全体が、色と香り、そして生命の喜びに包まれているようです。
そんな景色を眺めながら、ゆっくりハーブティーをいただく時間は、本当に贅沢だなぁと感じます。

一昨年前、この庭のシンボルだったくるみの大木が枯れてしまいました。
そのあと新しい木や花を植えたものの、しばらくはどこか寂しく、庭全体がまだちぐはぐな感じでした。
でも時間とともに、それぞれの植物が自分らしく育ち、少しずつ調和し始めました。
そして今年の夏は、まるで庭そのものが生まれ変わったよう。
「あぁ……なんて美しいんだろう。」
うっとりとして、心から感じる風景が、目の前に広がっています。
聖ヒルデガルトが「Viriditas (ヴィリディタス)」と表現した「緑の力」。
その息吹が、この庭いっぱいに満ちています。
草を抜き、枝を切り、土を耕し、毎日水をやる。 植物たちの様子を見ながら、少しずつ手をかけていきます。
少しだけでも手入れをした後に庭を見ると、まるで庭全体が喜んでいるかのように輝いているのです。
そして庭を眺めながら、ふと思いました。
自然療法も、きっと同じなのではないだろうか、と。
私たちの身体も、心も、魂も、一つだけを整えればよいものではありません。
さまざまなものが響き合いながら、少しずつ調和へ向かっていく。
それが、聖ヒルデガルトの言う「中庸」なのだと思います。

「これだけ」が増えている時代
最近、SNSでは
「老化の原因はこれだった」
「この栄養素さえ摂れば大丈夫」
「この食べ方だけが正しい」
そんな発信を目にすることが増えました。
新しい研究を知ることは、とても大切です。
ある脂質の酸化が体へ与える影響など、食生活を考える上で参考になる研究も数多くあります。
でも、それはあくまでも「一つの視点」。
私が心配なのは、一つの研究や一つの身体の仕組みだけで、人間の健康や老化のすべてを説明しようとする考え方です。
その結果、本来、地域で受け継がれてきた自然な食材までもが、極端に避けるべきものとして語られる場面も見かけます。
一つの成分が体へ影響を与えることと、
それが健康のすべてを決めることは、同じではありません。
そして、「これだけ摂れば大丈夫」というほど、人間の体は単純ではないですよね。
もちろん、現代の食生活には偏りもあります。
だからこそ大切なのは、極端に振れることではなく、
聖ヒルデガルトも繰り返し説いていた「中庸」の視点なのではないでしょうか。

誰が、何を伝えているのか
もう一つ、私が気になることがあります。
最近は、発信する人自身が商品やサービスを持っていることも多く、その考え方に沿った情報が強調されやすい時代になりました。
たとえば、はちみつを扱っている人なら糖質の大切さを、精油を扱っている人なら精油の魅力を強く伝えたくなるかもしれません。
もちろん、それ自体が悪いことではありません。
はちみつは、聖ヒルデガルトも薬の一部として用いていましたし、私の実家でも日本ミツバチの養蜂をしています。精油も然り。
自然の恵みとして、本当に素晴らしいものです。
だからこそ、何かを学ぶときには、
「この人は、どんな立場から話しているのだろう。」
そう考える視点も大切なのだと思います。

「あなたはどう思いますか」
私がドイツやイギリスで自然療法を学んだとき、先生方が何度も伝えてくださった言葉があります。
「あなた自身が考えて、あなた自身が選んでいけばいい。」
先生の答えに従うことが学びではありませんでした。
さまざまな研究や伝統的な知恵を示した上で、
「あなたはどう思いますか。」
「この人には何が必要だと思いますか。」
そう問いかけられることが、学びの中心にありました。
先生が上、生徒が下ではなく、ともに考える存在。
その姿勢は、ヨーロッパでは国が違っても共通していました。
聖ヒルデガルトも、人間を一つの臓器や一つの成分だけで見てはいませんでした。
食事、眠り、働き方、心の動き、人との関わり、そして自然との繋がり。
それらすべてが調和する中で、人の生命力は育まれると考えていたのです。
その緑の生命力を、彼女は 「 Viriditas (ヴィリディタス)」と呼びました。
自然療法とは、一つのハーブを覚えることでも、一つの理論を信じることでもありません。
植物や食事の知恵を学びながら、自分の身体の声に耳を澄ませ、自分で考え、自分で選んでいくこと。
そして教える側もまた、「これが唯一の正解です」と答えを押しつけるのではなく、
その人自身が答えを見つけられるよう寄り添うことが大切なのだと、私はいつも感じています。
一度枯れ果てたような庭の花々が、また蘇り、それぞれ違う姿のまま、
いつしか調和して、美しい一つの風景をつくりだせるように。
私たちの健康もまた、一つの成分や一つの方法だけではなく、
さまざまなものが響き合う中で育まれていくのだと思います。
だから私はこれからも「これだけで大丈夫。」そんな自然療法ではなく、
1000年前に聖ヒルデガルトが伝えた「中庸」と「Viriditas」の智慧を大切にしながら、皆さんが自分自身の身体と向き合い、自分で考え、
自分で選べるようになるための自然療法を伝えていきたいと思っています。

(後編へつづく) 後半のコラムはこちら
聖ヒルデガルトの教えや、観想的な在り方、自然療法の知恵を、
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一緒に、素敵な仲間たちと共に、聖ヒルデガルトを生きていきましょう。
いつもあなたの健康と幸せを祈っています。

第 16 回目のヒルデガルト・ファミリエ通信のまとめ Viriditas の季節に ― 庭を眺めながら、自然療法について考えたこと 後編
Viriditas (ヴィリディタス) は、生命が本来持つ調和の力。
心・体・魂が響き合い、少しずつ整うことで、本来の生命力は育まれていきます。
「これだけ」ではなく、「中庸」を大切に。
一つの情報に偏らず、多様な視点から自分に合ったバランスを見つけることが大切です。
自然療法は、自分で考え、自分で選ぶこと。 身体の声に耳を澄ませながら、自分自身に合った道を選んでいくことが、健やかな暮らしに繋がります。




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